プロ野球の人的補償制度について
オフシーズンといえば、ドラフト会議とFA宣言ですよね。そのFA宣言についてまわってくるのが人的保証制度です。
↓人的保証制度についてはこちら
この記事の中では人的保証制度が見直されるべき二つの理由と、議論されている代替案について説明します。
人的保証制度:問題①『岩瀬式・和田式』プロテクト
『岩瀬式・和田式』プロテクトとは?
大野奨太(日本ハム→中日)のFA移籍に伴う人的補償に関して、中日が岩瀬仁紀をプロテクトリスト外にしながら指名を防いだとされたこと。また、正規のプロテクトを行わずに実質的なプロテクトをするその手法。(東スポWEBより参照)
プロテクトが発生した背景
岩瀬選手の場合
2017年オフ、日本ハム・大野がFA宣言し中日へ移籍。12月20日に人的補償のプロテクトリストが到着すると、日本ハム・吉村浩GMは「ファイターズとしてインパクトがあるリスト」とコメント。この様子から、人的補償での選手の獲得があるものと予想されていた。ところが年が明けて1月6日、日本ハムは支配下枠がギリギリにも関わらず、新たにニック・マルティネスを獲得。そして14日、日本ハムは中日に対し「人的補償を求めず、金銭補償のみを受け取る」ことを発表した。(東スポWEBより参照)
ここから、あることが予想されました。
本来なら選手を一名差し出さないといけないことを結果としては、金銭で済ませたことになりますから、野球ルール上は問題はありませんが、当時の一部野球ファンからは文句もありました。
和田選手の場合
↓2024年1月11日 午前中のニュース
フリーエージェントで入団した山川穂高選手の人的補償として、ソフトバンクホークス和田毅投手(42)が西武ライオンズに移籍することがわかりました。 和田投手はドラフト自由枠で2003年ホークスに入団。 1年目から14勝を挙げ新人王に輝くと、その後は左のエースとして2度の最多勝を獲得、2012年にはメジャーリーグにも挑戦し、ホークス復帰後は長年に渡り投手陣を牽引してきました。(Yahoo!ニュースより引用)
↓2024年1月11日 午後のニュース
ソフトバンクホークス甲斐野央投手が、フリーエージェントで入団した山川穂高選手の人的補償として西武ライオンズに移籍することが発表されました。 球団は去年12月、フリーエージェントで山川穂高選手を獲得。 それに対しライオンズはホークスが提出した人的補償のプロテクト28人から外れていた甲斐野投手を指名しました。 ライオンズは10日までにチーム最年長・和田毅投手の指名を打診していましたが、方針を転換。(Yahoo!ニュースより引用)
和田選手の場合も野球のルールに抵触するわけではありません。ソフトバンクフロントをたたく声がかなり上がりました。
『岩瀬式・和田式』プロテクトへの対策
『岩瀬式・和田式』プロテクトへの対策として有力な手段が二つあります。
- 人的保証制度をそもそも撤廃する
- ドラフト指名権を譲る
人的保証制度をそもそも撤廃する
↓選手会は人的保証制度撤廃にをNPBに訴えています。
ドラフト指名権を譲る
FA宣言した選手を獲得した球団は、移籍前の球団に対してドラフト指名権を譲る方式です。
MLBのドラフト指名権では、各球団でタイプAにランクされた選手がFAで移籍した際には、その補償としてドラフト1巡目の指名権が譲渡される。日本のドラフトは完全ウェーバーではなく、ドラフト1位指名は抽選によって決まるため、1位指名の譲渡というのは難しいものの、グレーゾーンが多い今の人的保証制度よりは、不満が少なるなるでしょう。
人的保証制度:問題②『プロテクト外し』
プロテクト外しとは
⇒プロテクト外しとは、育成契約の特性を利用してFA選手に対する人的保証の対象から逃れること。野球選手の育成という育成契約の本来の目的とは違った使い方に対する蔑称。
プロテクト外しが発生したことの発端
巨人が2022年11月23日に梶谷隆幸(34)、立岡宗一郎(32)、中川皓太(28)、高橋優貴(25)、平内龍太(24)ら11選手に自由契約を通達。同時に全11人に対して育成契約を打診した。
梶谷隆幸(34)選手は、年俸は2億円を超えるプレイヤーで、年齢・実績も含めると違和感があります。この契約内容に対して、11球団のファンからは『ずるい!』との声が上がっています。
育成契約がなぜずるいのか?
育成契約がずるいといわれていることには、FA契約の『人的保証』が大きく関係します。
育成契約の選手は、人的保証の対象外
ということです。FA契約の選手を獲得した場合に、獲得した球団は選手の所属先に対して、『契約金or契約金+選手』を補償として譲渡する必要があります。戦力の均衡を保つためですね。さらに、補償選手(人的保証)でエースを取られないために、プロテクトというシステムがあります。
この「人的補償」には育成選手は含まれません。つまり、28人のプロテクト枠を超えて、39名の選手をプロテクトしている!と他球団のファンは感じています。
プロテクト外しを実施したのは2022年ジャイアンツだけではない
2022年だけでもオリックス、ドラゴンズが同様のことをしています。
2022年オリックスの場合
オリックスは、21年ドラフト1位の椋木蓮投手(22)ら4人に来季の契約を結ばないと通達したと発表した。 椋木は東北福祉大からドラフト1位で入団し、4試合に登板して2勝1敗。防御率1・02。9月にトミー・ジョン手術を受けており、育成契約を打診する方針。(スポーツ報知より引用)
昨年のドラフト1位を育成契約にしました。
2022年ドラゴンズの場合
中日は18日、岩崎翔投手、加藤翼投手、垣越建伸投手の3選手に来季の契約を結ばないことを通告したと発表した。3選手とも育成選手として再契約する方針という。(中日スポーツ東京中日スポーツより引用)
ドラゴンズも3名の選手を育成契約にしました。
プロテクト外しのデメリットは?
育成契約中の選手は他球団から強奪される可能性がある
プロテクト外しのデメリットは、育成契約をする際、他球団が『支配下契約』を提示したら、その選手を強奪されるということ。育成契約は以下の順番で契約する必要があります
支配下⇒自由契約⇒育成契約
自由契約中は他球団も選手に接触可能です。
プロテクト外しに対する対策
ジャイアンツもオリックスもドラゴンズも、岩瀬選手も和田選手も今の野球のルールにのっとった方法で、工夫しているということです。そこで私が提案したいのが、MLBのDFAを真似することです。
育成枠とけが人を混ぜるのではなく、けが人という枠を作成することで、名目通り育成選手を起用してほしいです。
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